けんしんです。
日立製作所が、スイス重電大手ABBから送電事業を買収するようです。
日立がABBと電力システム買収で交渉
スイスの重電大手ABBは、電力システム事業について日立製作所と協議していることを確認した。日本経済新聞電子版は12日、日立がABBの電力システム事業を買収する方向で最終調整に入ったと報じていた。
ABBは声明で「日立とは、2014年12月に発表した電力システム事業におけるパートナーシップの拡大および再定義に向けて現在、交渉に入っていることを確認する。何らかの合意締結に至るか、またその時期や条件などについて確たるものはない」と述べた。
引用元:ロイター
実現すれば、買収金額は8000億円規模で、日立が行ったM&Aでは過去最大。
売上高は10兆円を越え、シーメンスと並び、重電世界一のゼネラルエレクトリック(GE)に次ぐポジションになります。
(GEの2017年度売上高は約13兆7000億円、シーメンスは11兆2000億円)
日立は電力・エネルギー分野を主力事業と位置付けており、発電した電気を企業や家庭に送る配線事業にも力を入れているようです。買収後の事業に日立のIoTの技術を生かせるとの判断もあるようです。
日本の重工業も思いのほか強い
このニュースを聞いて非常に驚きました。
私のイメージでは世界の重電はGEとシーメンスが圧倒的な2強で、日本の重工大手は全く歯が立っていないというものでした。
しかし、決算資料を当たってみたところ日立の売上高は2018年度予想で9.4兆円にもなるのですね。規模だけで言えば、近い水準まで迫ってきています。
日立は家電がメインだった時期は苦戦を強いられていましたが、重電がメインに業態変化し、見事に復活を遂げたというイメージがあります。
最近のGEが絶不調とは言え、日本企業が天下のGEに迫るというのは日本人としては嬉しく思います(元GEホルダーとしては少々複雑な思いもありますが)。
市場は可もなく不可もなくとの判断か
発表翌日の株価は、3300円→3283円(▲0.52%)と微減でした。
こうした大型買収は買う側の株価が大きく下がる場合が多いため、微減で済んだという事は、市場は「悪くない」と判断したのかもしれません。
判断材料が少なくて、動けなかったというのもあるかもしれませんが。
買収資金をどこから用意するのか?
8000億もの金額になるとどうやって資金調達するのか気になりますね。
B/Sを見たところ、現金は8000億あるようですが、運転資金のような意味合いも大きいため、全部使う事は出来ないはず。
順当なら銀行借り入れや社債の発行だと思いますが、総資産が10兆で、負債が5.4兆(うち有利子負債1.2兆)、のようなので、8000億なら手元現金+借入でも対応出来そうな気がします。
財務体質は悪化するでしょうが、許容範囲かなと思います。
株主にとって恐ろしいのはやはり増資ですが、日立の財務体質が切迫した状況でない事を踏まえれば、増資の可能性はあまり高くないように思います。あくまで個人の感想ですが。
現時点では良い買収か判断出来ない
ロイターによるとABBの送電事業の価値は100~120億ドルとの事なので、8000億円なら安く買えているように思います。
しかし、ニュースを読む限り、このABBの送電事業が日立にどのくらいの利益や相乗効果を生むかイマイチ分かりません。
この買収が成功か否かを判断するには時間を置かねばならないと考えています。
GEを越えて世界一に欲しい
今後、人口減で日本の国力低下が避けられない以上、海外に活路を見出すのは妥当な選択だと思っています。
日本企業の海外企業の買収は失敗事例も多いですが、是非とも上手く行って欲しいですね。
2015年にイタリアの鉄道信号大手を買収したように、M&Aを積極的に行っているように思います。
日立には、GEを追い越し、重電世界一の座を掴み取って欲しいと思っています。
売上高については、GEの業績が苦しく、スピンオフを進めていることを考えれば、遠からず達成できるかもしれません。
ただし、時価総額については、日立3兆円に対して、GEは未だに7兆円もあります。
今GEは苦しいとは言え、時価総額で勝つのはなかなか難しそうです。
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