けんしんです。
果たして悪材料出尽くしとなるのでしょうか?
日立が英原発を凍結し、2000~3000億円の損失を計上すると報道がなされました。
日立がイギリス原発を凍結、2000億円強の特別損失計上へ
日立製作所は英国で計画する原子力発電所の建設事業を中断する方針を固めた。約3兆円の事業費を巡る日英の政府や企業との交渉が難航し、現時点での事業継続は難しいと判断した。
2千億~3千億円の損失を2019年3月期中に計上する見通しだ。日本企業による海外での原発建設は事実上なくなる。日本政府のインフラ輸出政策も転換を迫られそうだ。
引用元:日本経済新聞
英国原発事業とは
日立は英国政府と英中西部アングルシー島で原発の新設を計画していました。
日立は2012年に英国原発事業会社「ホライズン・ニュークリア・パワー」を買収し、アングルーシー島に原発2基を建設し、2020年前半に運転開始するのが元々の計画でした。
総コストは、当初計画より膨らみ、3兆円規模に達する見通しとなっています。
この3兆円のコストの2兆円を英国政府が融資し、残りの1兆円が日立、英国政府・現地企業、日本政府・電力会社の3社が均等に投資する方向で検討していました。
しかし、日本側の出資企業の確保に難航し、英国政府に更なる出資を求めていました。
報道により株価は急騰
報道を受けて日立株は+8.6%と急騰しました。
①報道時の株価
②ここ1年の株価推移
日立はここ1年で株価が4500円→3000円とおよそ3分の2に落ち込んでいました。
2000~3000億円の損失計上の可能性が示されても株価が急騰する辺り、如何に日立にとって英原発事業が悪材料と見られていたかが分かりますね。
東芝も原発事業で大きな損害を負っていた
少し前に騒ぎになっておりましたが、東芝も原発事業で大やけどを負っています。
東芝が2006年に買収した米原子力大手ウェスチングハウスについてです。
元々ウェスチングハウスは三菱重工が買収先として有力でしたが、東芝が相場の3倍もの金額を提示し、買収に成功しました。
しかし、このウェスチングハウスは米国で建設中の原発4基でコストが想定より大幅に上回ったことで経営難に陥り、米連邦破産法11条(日本でいう民事再生法)が適用されました。
これにより、東芝は2016年度決算で1兆3000億円ものウェスチングハウス関連損失を計上し、債務超過に転落。主力事業であるメモリ事業の売却に追い込まれました。
日立も原発が悪材料と取られるのも仕方ない
上記、東芝の記憶があり、投資家から原発がリスクと捉えられるのはやむを得ないと思います。
英国原発事業についても、
①他の出資者が見つからず日立の負担が大きくなるリスク
②事業費が更にかさむ可能性
③万一事故が発生した場合に生じる巨額賠償
を考えれば、どこまで損失が拡大するか分かりません。
決断を遅らせれば、更にコストが増えるようです
報道で株価が大幅に上昇したのは、2000~3000億円で手打ちできるなら良しと市場が判断したのでしょう。
(ただし、この報道は日立自身が現時点で公表したものではなく、決定した事実ではないと言っていることから現時点で確定したものではありません。)
しかし、失敗した際の損失の大きさから、一企業が手に負える範囲を越えており、相当な確率で日立は撤退するのではないかと考えています。
先月、日立がABBが送電事業を買収していますが、これも原子力に代わる柱を手に入れようとしたのかも知れません。
原発は日本の強みと言える事業でしたが、東日本震災以降国内事業が停滞し、海外に活路を見出していました。
しかし、金額規模があまりにも大きく個別企業が背負える事業リスクを越えて来ています。
今回の日立の他、三菱重工もトルコの原発建設計画を断念するようです。
原発を推進するなら官のバックアップ(そして、そこまでして推進すべきか否か)について国として判断しなければならないと考えています。
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