けんしんです。
これまで、セクター別ETFについて、VGT(情報技術)、VOX(通信サービス)、VFH(金融)について書いてきました。
私が保有する米国株と関連性が高かいため優先的に書いた形ですが、オフェンシブ・セクターに偏っている気がします。
そこで、今回はディフェンシブセクターの筆頭格である公共セクター、即ちバンガード・米国公益事業セクターETF(VPU)について書こうと思います。
VPUとは
VPUとは、「MSCI USインベスタブル・マーケット・公益事業25/50インデックス」に連動するETFで、米国の公益セクター全般に投資しています。
このセクターは、電力、ガス、水道企業、独立系送電事業を行う企業で構成されています。
また、大型株、中型株、小型株を含んでおり、対象セクター全体を広く網羅しています。
VPUの経費率は年率0.1%という素晴らしい価格設定で、非常に低コストで分散効果が得られます。資産額は38億ドル(約4000億円)と流動性も十分です。
VPUの構成銘柄
VPUのグループ別比率は下記の通りです。
電力が56%と全体の過半数を占めており、半分は電力のETFと言ってよい状況です。
ガスや水道も含まれますが、何れも5%程度とあまり大きくはありません。
総合公益事業が30%と第2位につけています。
どういう業態かは断定できないのですが、総合が意味する通り、多角化された公益事業を営んでおり、1つのグループに絞れない企業が含まれているのではないかと思うところです。電力とガスの持ち株会社って多いですからね。
VPUの構成銘柄上位は下記の通りです。
1位:ネクストラエナジー、2位:デュークエナジー、3位:ドミニオン・エナジー、4位:サザン…と見事にエネルギー企業で占めれています。
社名にエネルギーが入っている銘柄ばかりです。
銘柄構成を見ても、ほぼすべてがエネルギー企業、その中でも多く占めるのが電力系という構図が見えて来ます。
ちなみに、公益に該当しそうな業種として、AT&Tやベライゾンが該当する「通信」、ユニオン・パシフィックやCSXが含まれる「鉄道」があります。
しかし、「通信」はVOX(通信サービスセクター)に含まれ、「鉄道」はVIS(資本財サービスセクター)に含まれ、VPUには含まれていません。
以上から、VPUは広い意味での公益事業の中で、電力・ガスを中心とした発電系会社をメインとしたETFと言ってよい構成です。
VPUの実績・チャート
VPUの実績
VPUの実績は下記のとおりです。
3年間を除く期間で10%以上のリターンとなかなかの成績を残しています。
公益セクターはディフェンシブなセクターであり、下げに強い反面、上げ局面に弱いという性質を持ちます。
リーマンショック以降は、欧州債務危機、チャイナショック、米中貿易戦争などの下げを経験しつつも基本的に上げ性質でした。
こうした状況にもかかわらず、高いリターンを出してきたのは立派だと思っています。
VPUのチャート
VPUのチャートは下記のとおりです。
VPUは青色で、比較対象として、S&P500のETF(VOO)を赤色で、ネクストラエナジー(NEE)を黄色で示しています。
VOOと比較では、相場全体が強かった2017年まではVOO>VPUだったものの、貿易戦争や景気後退懸念で市場が乱降下した2018年に逆転してVPU>VOOとなりました。
2019年に入ってからは概ね歩調を合わせた動きになっていますね。
VPUは、上昇期に弱く、下降期に強いという特性が浮かび上がります。
2019年に入ってからは、VOOと共同歩調ですが、今後の相場全体の楽観or悲観に応じて、差が付いてくると思われます。
VPUの良い点
原発事故などの個別リスクを分散が出来る
ETFには全て言える理由ですが、VPUは多くの公益企業で構成されているため、個別銘柄投資よりリスクが抑えられています。
VPUは電力会社が過半数を占めます。
電力会社は安定銘柄の代表格で倒産する事態は想定しにくいですが、東日本大震災における東京電力のように原発リスクが存在します。
発生の可能性は小さいものの、実際に起こると大打撃を受ける原発事故は非常に危険です。
電力の個別株リスクは侮れないため、これを軽減できるVPUはメリットがあります。
景気の下降局面で強い
電力会社・ガス会社などの公益企業は不況に強い性質があります。
これはインフラ関係は、不況が来たからと言ってそう簡単には削れないという特性があるからです。
実際、上記のチャートを見ても分かる通り、市場全体が混乱した2018年に市場平均を大きく上回る結果となりました。
下げ局面において、VPUへ投資をすることで、他のセクターに投資するより資産防衛しやすいというメリットがあります。
VPUの悪い点
景気の上昇局面で市場平均に劣後する
VPUの良い点と真逆の状況ですが、景気上昇局面に弱いという性質があります。
これは、景気が良くなり懐が潤っても公益企業への支出はあまり増えないという特性に起因します。
景気上昇局面で企業業績が良くなるという事実はあるものの、金融や一般消費財などの景気循環株と比べて、上昇は弱いという点は注意が必要です。
景気上昇期においては、他の投資家よりパフォーマンスが悪いという点で悔しい思いをする可能性があります。
この事は、景気後退や市場が混乱した時の保険のようなもので、この性質自体悪いことではありませんが、そうは言っても悔しいのもまた人情であると考えています。
電力株の比率が大きい
VPUは公益事業セクターと銘打っていますが、実際には電力会社が過半数を占めています。
電力会社の動向にVPUのリターンが左右させられる点は注意が必要です。
電力会社は原油価格の上昇がコスト圧迫要因になるため、原油価格の動向を意識する必要があります。
また、脱原子力が進めば、コストの高い再生エネルギーやESG投資の流れに逆行する火力への依存を高める要因にもなります。
注:ESG投資
環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視して投資すること。
終わりに
今回はVPUについてまとめてみました。
公益株は景気後退局面には強いものの、景気上昇局面では株価が上げにくいという性質があります。
また、安定企業が多く、倒産するリスクは他の業種と比べて小さいですが、一方で原発事故などの惨事も起こりえます。
そうした点を踏まえれば、他のセクター別ETFと比べて、分散の必要性は小さいかも知れませんが、それでもやはりVPUはメリットがあります。
また、ディフェンシブなセクターなのにリターンも思いのほか高かったという点も素晴らしいと考えています。
株価が安い時に購入した事もあり、東電株には満足していますが、原発事故のような状況を考慮すると東電一つに頼るのは不安もあります。
東電株を売却した時は、代わりにVPUを購入するのは悪くない選択肢だと考えています。
関連記事
VDE(エネルギーセクターETF)について書いた時の記事です。
VGT(情報技術セクターETF)について書いた時の記事です。
VOX(通信サービスセクターETF)について書いた時の記事です。